全国どの地域においても大雨・地震・津波・高潮の災害に巻き込まれる可能性がありますが、近年、想定される被害状況を予測し、人命にかかわる被害を未然に防ぐために「特別警報」が運用されるようになりました。
そこで今回は、特別警報とはどういうものなのか?特別警報の種類や、もし私たちが住んでいる地域に特別警報が発令された時に、人命を守ることを最優先にどう行動するべきなのかについて、みていきましょう。
目次
特別警報とは?
まず「特別警報」がどんな警報なのか知っておきましょう。
特別警報とは、気象災害である「水害・地震・噴火などの重大な災害が起こる可能性が非常に高い状況」にあることを意味しています。
ニュースなどで「数十年に1度のこれまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った状況にあります。ただちに地元市町村の指示に従い、命を守るための行動を取ってください」というアナウンスがされることがありますが、これが「特別警報」です。
では具体的に、どのような状況下において「特別警報」が発令されるのでしょうか。
特別警報にはいくつか種類がありますが、気象庁によると、
大雨特別警報 | 大雨特別警報は、台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合、若しくは、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により大雨になると予想される場合に発表します。大雨特別警報が発表された場合、重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれが著しく大きい状況が予想されます。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨特別警報(土砂災害)」、「大雨特別警報(浸水害)」又は「大雨特別警報(土砂災害、浸水害)」のように発表します。雨が止んでも重大な土砂災害等のおそれが著しく大きい場合には発表を継続します。 |
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大雪特別警報 | 大雪特別警報は、数十年に一度の降雪量となる大雪が予想される場合に発表します。 |
暴風特別警報 | 暴風特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により暴風が吹くと予想される場合に発表します。 |
暴風雪特別警報 | 暴風雪特別警報は、数十年に一度の強度の台風と同程度の温帯低気圧により雪を伴う暴風が吹くと予想される場合に発表します。 |
波浪特別警報 | 波浪特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高波になると予想される場合に発表します。 |
高潮特別警報 | 高潮特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高潮になると予想される場合に発表します。 |
となっています。
特別警報が発令されるようになった背景には、2013年に起きた東日本大震災による大津波の被害、また同年に起きた台風の被害があります。
東日本大震災では、気象庁が大津波警報を発表したものの住民が迅速に避難することができず、多くの犠牲者がでてしまいました。
また、同年の9月に発生した台風12号でも、紀伊半島を中心に記録的豪雨となり、多くの犠牲者や行方不明者がでる被害をもたらしました。
どちらの災害にも共通していたのが、「気象庁による警報の発令だけでは災害の大きさや重大性また切迫性が住民に伝わりにくかった」という指摘です。
そのため、この時の教訓をいかして法改正が行われ、「予測をはるかに超える重大な災害が起こるおそれがある場合には、特別警報を発令する」と定められたのです。
特別警報が発令された場合に取るべき行動について
特別警報が発令された時には、災害による被害の危険性が非常に高く、命に関わる事態が起こる可能性がある状況です。
実際に住んでいる地域で特別警報が発令された場合、どのように行動するべきなのかみていきましょう。
〜特別警報が発令されたら〜
いつでも避難行動がとれるよう準備
避難の準備に、大げさということはありません。常に最悪の状況を想像して準備にかかりましょう。
- 着替えを済ませ貴重品や防災グッズを手元に置いておく
- どこからでも出られるように、靴はそばに置いておく
- 避難ルートや避難場所の確認をしておく
- 貴重品などは、家屋の高い場所(2階など)に移動させておく
- 家族がいる場合、ひとつの部屋に集まるようにしておく
- ペットがいる場合、ケージの中に入れていつでも移動できるようにしておく
- なるべく火は使わないようにする
などの準備が必要です。
〜特別警報が発令されたら〜
災害の最新情報を常に入手
準備を整えた後は、常に最新の気象情報を入手していきます。
では、最新の情報を入手するための手段をあげてみましょう。
- テレビ
- インターネット
- ラジオ
- 広報車や防災無線
このうちテレビでは、リアルタイムな情報だけでなくテロップとして画面の上部に情報が流されています。
しかし、台風や地震などで電気が停止してしまう可能性もあります。
万一、テレビが見られなくなった場合も予測し、スマホや携帯などのインターネットやラジオから情報を入手できる手段も用意しておきましょう。
ただし、ネットの情報では信ぴょう性にかける情報も出回ります。
うその情報に振り回されないように、自治体からの緊急情報が受け取れるアプリなどを事前にダウンロードしておくがおすすめです。
無料で使用できるものとしては、自治体、NHK、気象庁などが発信しているアプリがあります。
またラジオについては、電気がなくても使えるタイプ(乾電池で動くタイプ)を用意しておくとより安心です。
地域によっては、広報車や防災無線で避難を呼びかける場合もありますが、突風による風の音などで聞こえない場合もありますので、注意しておくようにしましょう。
〜特別警報が発令されたら〜
警戒レベルをチェック
次の表は、住民が避難の必要性をより判断しやすくするため、内閣府による防災時の避難のあり方をレベルで区分したものです。
警報が発令された際に住民が取るべき行動を、5段階に分けて明確化されています。
特別警報危険度レベル
警戒レベル | 住民が取るべき行動 | レベルの内容 |
---|---|---|
警戒レベル5 | 命を守る最善の行動 | すでに災害が発生している状況にあり、最大限に命を守るための行動を取らなければいけないレベル |
警戒レベル4 | 避難 | 避難勧告、避難指示 災害の危険度が高い状況。避難場所への移動を開始する。ただし、避難場所への移動がかえって危険度が増すと判断される場合には、近隣の安全な場所への避難や建物内のより安全な部屋への移動など緊急の避難が必要なレベル |
警戒レベル3 | 高齢者は避難、他の住民は準備 | 避難準備 避難に時間のかかると考えられる住民の避難を開始する。その他の住民は、避難の準備を整え、状況に応じて自主的に避難を開始する必要があるレベル |
警戒レベル2 | 避難行動の確認 | 避難場所や避難経路、避難のタイミングを再確認しておく必要があるレベル |
警戒レベル1 | 心構えを高める | 防災気象情報の最新情報を入手しておくレベル |
警戒レベルが3以上つまり、警戒レベル3・4・5に関しては市町村が発令します。
特に高齢者や子供身体の不自由な方などは、避難所への移動には時間がかかります。
警報レベル3の避難準備及び高齢者等避難開始情報が発令されれば、迅速に避難準備を取り、対象者がいる場合には避難を開始しましょう。
またお住まいの地域に警報レベル4である避難勧告や避難指示が発令された場合、特別警報が発令されるまで避難指示を待つ必要はありません。
身の危険を感じるような状況であれば、すぐに行動を開始しておきましょう。
過去には、非常に短い時間帯だけに猛烈な豪雨となり、特別警報以前に避難勧告さえ発令される前に、災害による重篤な被害が起きた地域がありました。
このことからも、避難勧告および避難指示の発令を待つだけではなく、住民自らが災害の危険度を判断し行動することも必要になってきます。
また安全が確保できる場所は、避難所だけに限ったわけではありません。
すでに災害による被害が起きている場合には、無理に避難所へ移動する方が危険な場合もあります。
時間をかけて移動する方が危険と考えられる場合には、近隣で安全が確保できる場所また家屋内でより安全が確保できる場所に移動する判断をとりましょう。
安全が確保できる場所とは
- 木造の家屋から鉄筋の家屋への避難
- 最上階が浸水しないと考えられる建物への避難
- 川沿いから離れた高台にある建物への避難
- 山沿いから平地への避難
などがあげられます。
ただし避難する場合は、単独ひとりでの行動は避けましょう。
家族、または近隣住民と共に行動することをおすすめします。
特に特別警報が発令されている状況で、むやみに周辺の被害状況を確認するためだけに外にでるのは危険です。
絶対にやめておきましょう。
居住地の周辺の危険区域や避難経路や避難場所を把握しておこう
お住まいの地域や環境によっては『特別警報が発令されたからといって本当に避難する必要があるのだろうか』と判断に悩む方もいるでしょう。
もしも判断に困る場合には、お住まいの地域周辺の危険度を判断材料にしてみましょう。
- 山のふもとまたは山が近くにある
- 海に近い
- 海抜が低い
- 大きな河川が近くにある
- 築年数が古く老朽化しているマンションが近くにある
- 火山の周辺
このような地域に住んでいる場合、特別警報が発令されればより危険度が高くなります。
その結果、
- 大雨による河川の氾濫
- 土砂災害
- 台風の突風によるビルの崩落や火災
- 地震による津波
- 火山の噴火による火山灰や土石流の被害
などの被害が予測されます。
これらに当てはまらなければ、災害の危険度は低いというわけではありません。
地域に長く住んでいれば、今までも何度も災害を経験したことがあると思います。
その経験が「これくらいならまだ大丈夫」という判断をさせてしまう要因になりかねません。
「自分の地域は大丈夫」という自己判断ほど、危険なものはありません。
特に「特別警報」が運用されてからは歴史が浅いので、経験や勘に頼る方が正しいと捉えてしまう方も少なくないのが現状です。
さらに過去の大規模災害の後に生まれた年代の方であれば、情報としては知っていてもリアルタイムで報道されていた当時の様子は知らず、身近で大規模災害が起きるとはイメージしにくいケースもあります。
特別警報が発令された状況では、すでに周辺の地域で重大な被害が起きている場合もあります。
「まさか」という事態が起きてからでは到底間に合わないこともありますので、日頃から防災意識を高め、経験や勘で災害は起こらないと決めつけないのが大切です。
災害が起きた時命を守るためにも、日頃から居住地周辺・学校・職場・日常的によく利用している区域にある災害危険区域はどこがあてはまるのか、ハザードマップを利用しつつ確認しておきましょう。
特別警報が発令されたらどうする? まとめ
今回は特別警報が発令された時、どう行動すればいいのかについてお伝えしました。
避難所に行けばプライバシーはほぼありませんので、避難することに迷いを感じる方も多いと思いますが、特別警告が出される地域は数十年に一度の災害が起こりうるので、命を最優先する判断が必要になります。
避難所に限らず、万一の場合どう行動すれば安全が確保できるのかについて、家族や周囲の人たちと話し合ってみてはいかがでしょうか。
少しの判断の遅れが、命に関わります。
是非、改めて防災について考えるきっかけにしていただければと思います。